2021年1月30日土曜日

グレート ・リセット ダボス会議で語られるアフターコロナの世界

 

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コロナ禍による社会の変化を前向きに捉える

コロナ禍の中、政府批判する本や記事が巷に溢れています。風土も法律も基本的人権の考え方も全く違う他国を引き合いに、『あの国はうまくやってるじゃないか、なのに』という意見には本当に辟易してしまっているのですが、テレビみてても野党の振る舞いをみててもそんなのばっかり。どんな政策をとったとしても、恩恵を受ける人とそうでない人は必ず出るでしょうし、一人ひとりが意見を発信できる中にあって、目立つ反対意見ばかりをセンセーショナルに取り上げて為政者を批判したところで何も生まないと思うのです。解決方法に正解などあるはずもなく、すべては手探りなのだからしょうがない。その中で、個人としてできることをみんながやっていくしかない、と。

本書は、現在の各国の対応を批判することなく、各国の文化や取りうる対策、その結果を俯瞰的に見たうえで、社会として何が強みになって、何が弱みとなりうるのか、を語ってくれているように思います。そして、むしろこのコロナをきっかけとして世の中を改善しよう、という意気込みを与えてくれるように感じました。


グレート・リセットするのか、元の社会に戻ろうとするのか

私はコロナ禍で殆ど会社に行かなくなり、もっぱらリモートワークの日々を過ごしています。毎日の通勤には往復で3時間以上を費やしていましたが、いまではその浮いた時間を、家族の食事の準備をしたり、掃除や洗濯をする時間に充てるようになり、家族の中での役割分担を『リセット』して新しい生活を過ごしています。

コロナが収束したら以前の生活に戻りたいか?と聞かれたら、私はNoです。そんな市民がたくさんいるでしょうから、マクロな視点で見れば社会もいろいろな側面から変革を求められる筈で、本書ではその姿を政府、テクノロジー、経済、環境、社会基盤などの様々な観点から解説してくれます。

おりしも、SDGs が声高に求められるようになり、温暖化の進行による将来の壊滅的な状況を避けるには『このままではいけない』『いまがその分岐点』と言われたタイミングでした。本書によれば、コロナによって排出が減ったCO2は前年比 8%程度。けっこう凄いことだと思うのですが、これだけ経済縮小の痛みを伴ったCO2削減でも、気候変動を抑える水準には程遠いとのこと(実はIT機器が消費する電力が、相当に大きいために大して減っていないそう)。エネルギー消費が減ったことは長期的には社会にとってよい変化ではあると思うのですが、コロナという強烈な衝撃であっても、我々の社会に求められる『リセット』はまだまだぜんぜん足りないようです。

だからこそ、本書に列記されている『あらゆる観点でのリセット』に前向きに取り組まなければいけないのでしょう。


変化は避けられない

先日、NHKスペシャルの『”夜の街”で生きる~歌舞伎町 試練の冬~』を視聴しました。田舎者の私からすると、ホストクラブやキャバクラなどは『不真面目に世の平和を謳歌する』というイメージだったのですが、実態は全く逆。『安全な娯楽を真面目に提供する』ことに真面目に真剣に取り組んでおられました。その中で、『歌舞伎町はこれからも続く、自分たちが終わらせてはならない』という趣旨の発言がありました。行政にやり玉に上げられ、その不公平と戦う姿は『歓楽街だって真面目に頑張っている』ことを実感させられるものでした。しかしながら、いま起こりつつあることは、『行政がスケープゴートにしようとしている』のではなく、『歓楽街へのニーズそのものがリセットされようとしている』と映りました。

私の仕事も同様。世の中が変わって、自分の仕事が大きく減ってしまうようなことは起こらないとは言えません。何が安泰かなんてホントにわかりません。様々なリセットの中には自分が損をするようなものもたくさんあることとは思うのですが、私は社会の一員として、『仕事が危うくなってきたら…』という恐怖はあるものの、『社会が持続のためにあっちこっちでリセットされる』を肯定的に考えていきたいと思いました。


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2021年1月25日月曜日

コンテナ物語 世界を変えたのは「箱」の発明だった マルク・レビンソン

 

Photo: https://unsplash.com/@diegitane

物流のグローバリゼーションがどのような経緯を経て作られたか、という歴史が語られる本。横浜の大桟橋からコンテナを満載した船を見たことがありますが、あのような大量&低コストの流通網が構築されるまでの紆余曲折が語られる本でした。

数々の闘争の産物

コンテナは世界共通のサイズで、そのまま鉄道にも搭載できるように設計されていて…なのは何となく想像できます。みんなが共通規格に従えば従うほど効率は上がるのなら、みんながWindows使うのと同じように規格は自ずと統一されていくものだ(ネットワーク外部性というやつ)、と思いきやとんでもない。本書は、原題の統一規格なコンテナ輸送が、それこそ様々な争いによって作られたものである、と教えてくれます。

たとえばこんな闘争が描かれていました。
  • 効率化で仕事を失う沖中氏(おきなかし:船と陸の間で荷揚げ荷下ろしをする作業員)とコンテナ導入で効率化を図る経営者との争い
  • コンテナのサイズや積み上げの機構、固定の機構に関する主導権争い
  • 輸送船のサイズ競争
  • 鉄道と船のコスト競争
  • 輸送費用を維持したい輸送会社の連盟団体と非加盟の輸送会社との荷主争奪戦
  • 港の覇権争い
  • などなど
驚きだったのは、多くの闘争が『既得権益(自分たちの仕事)を守ろうとして規制や団体交渉でイノベーションを阻もうとする勢力』との闘いであるという点。現代に例えると、『メールを導入したせいでFAX処理の担当者の仕事が無くなるなんて許せない』ということなのですが、『なるほど、そりゃ争うよね』とは思えません。とはいえ、環境の規制も、経営者倫理もコンプライアンスもまだまだ発展途上の時代、資本家がそれこそ好き勝手やって儲ける世の中で労働者が様々に闘ってきた、ということなのでしょう。

世界の変化はこれからもきっと続く

本書は今のコンテナ流通も最終形態ではない、と結びます。数年前だったら『とはいえ、これ以上劇的な変化なんてないでしょう?』と感じていたとは思いますが、CO2排出規制やコロナによる経済の縮小を目の当たりにして、むしろ『やはりまだまだルールは変わるに違いない』と思わざるを得なくなりました。

本の帯の『ビルゲイツも大絶賛』に若干のうさん臭さを感じてしまった本でしたが、新しい観点から歴史が学べる本としては面白かった。タイトルは『THE BOX』でしたが、テーマはハコそのものにあるのではなく、結局はハコを通じて人々がどうふるまってきたか、ということなのですね。

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全米ナンバーワンビジネススクールで教える起業家の思考と実践術 山川恭弘 大前智里

https://unsplash.com/@austindistel アントプレナー向け「夢をかなえるゾウ」 失敗を恐れずに経営の世界に飛び込みなさい、という啓発本。(ちょっと辛口で恐縮ですが)ストーリーとしては陳腐だったかも。『全米ナンバーワン』というタイトルも他人の褌で相撲取...