2021年2月5日金曜日

空腹ねずみと満腹ねずみ 上 ティムール・ヴェルメシュ

 

photo: https://unsplash.com/@jricard

ヒトラー復活の次は、難民問題

日本ではあまり報道されていなくて馴染みもないのですが、ひところ、地中海の沿岸に子供の遺体が漂着したり、大勢の難民を乗せたボートが転覆して大勢が亡くなったり…という事件が起こっているという話は耳にします。島国たる日本ではほとんど馴染みのない難民問題ですが、国境が陸続きのヨーロッパ諸国では非常に身近な問題の様子。人道的には受け入れることが理想ではありますが、現実として『彼らの生活の費用をだれがどのようにして賄うのか?』という問題があります。
後から知ったのですがこの著者は『帰ってきたヒトラー』を書いた人でした。前作と同じく社会がタブー視しているところを敢えて題材にする、というスタイルなのかもしれません。

マスコミを痛切に批判するスタンスは健在

『帰ってきたヒトラー』もそうでしたが、物語の中心にいるのは、『視聴率さえ取れればといのだ』というメディアの人たち。弱者の側に立ち、難民キャンプに人気キャスターを送り込んで、お涙頂戴のドキュソープを放映したところ、事態が思わぬ方向に発展し…というもの。『帰ってきたヒトラー』は物語の起点が『ヒトラーのタイムスリップ』という荒唐無稽なものですが、こちらは格段に現実味があります。

撮影クルーのガイド役に雇われていた難民の一人が、本人も意図しないまま『大行進』の先導役となり、大量の難民がドイツに向かて徒歩での移動を始める…というところで上巻が終わります。登場人物みんなが社会問題に切り込んでいくのかと思いきや『難民を救うのだ』という使命感を持っているのは人気キャスターただ一人で、それ以外の人たちは自分のことしか考えていない、という対比が面白い。

結末が気になります。

photo: https://unsplash.com/@mphotographym



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